船で帰るあなた
1994年2月2日発売の11枚目のシングル
作詞:池田充男 作曲:猪俣公章
カップリングは「角番」
恩師・猪俣公章が亡くなったのが1993年6月
「船で帰るあなた」は翌1994年2月にシングルとして発売された
この曲は1991年に一度レコーディングをしたもののお蔵入りになっていた(注)
猪俣公章は坂本冬美がこの歌を本当に表現できる時を待ってシングルとして発売したいという思いがあったのだろう
残念ながら猪俣公章の生前には実現しなかった
猪俣公章が亡くなった後、残されたこの作品を改めてレコーディングして発売したわけである
生前、猪俣公章は「『さよなら』という部分は歌っちゃだめなんだ 『さよなら』とささやけ」と言ったという
しかし、詞の内容が猪俣の死と重なり、想いを込めると悲しみが込み上がってくる
なるべく想いを込めないように歌っていたという
2016年1月8日にテレビ東京で放送された「波乱の歌人生」において坂本冬美は「恩師・猪俣公章が最後に伝えたかった坂本冬美への歌遺産」としてこの曲をを十数年ぶりに歌唱した
これまで自分でその楽曲を遠ざけていたと語っていた
涙をこらえての歌声
「さよなら」の言葉が心に静かに沁み込んでくる歌唱であった
天国の猪俣公章に届いた「さよなら」であった
いま改めて再レコーディングして残して欲しい一曲である
(注)この音源は「猪俣公章メモリアル・ベスト」(1993年9月29日発売)に収録されている